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2005.10.25

水晶なんてどうでもいいと思ってきたけれど

せめて今夜だけでも 綺麗(な波形)になりたい~♪

EZ-USB FX2(CY7C68013)というデバイスがあります。
このデバイスは非常に消費電流が大きく熱いデバイスなのですが、EZ-USB FX2LP(CY7C68013A)という低消費電力版も出ています。これは、基本的には上位互換なのですが、アプリケーションノートによれば、水晶の負荷容量CLを12pFにするようにと書かれています。(CY7C68013では20~33pF)

ところが、事実、CY7C68013AはCL=12pFではない水晶でも発振します。
しかし、もし違う容量のものを使ったら、発振周波数がシフトする影響があるかもよ、とアプリケーションノートに示唆されています。これは一体、どういうことでしょうか。

負荷容量というのは、下の図のように水晶からみた回路の容量のことで、水晶の横に付け加えれれたコンデンサの容量と基板のストレ容量の並直列になります。

cl

負荷容量は、外付けするコンデンサや基板の出来で決まる値ですが、
一般に水晶は、負荷容量が指定されています。

さて、一般に、負荷容量が小さいと負性抵抗が大きくなって発振が強烈になりますが、周波数の安定度が下がります。逆に負荷容量が大きいと安定性は上がりますが、負性抵抗が小さくなるので発振自体が危うくなります。
負性抵抗の値が水晶の等価直列抵抗の5~10倍となるようにしておくとよいと言われています。

負性抵抗は主にアンプの性能で決まります。
もし、負性抵抗が大きすぎる場合はRdの値を増やします。負性抵抗が小さい場合はRdを減らしたりゼロにし、それでもだめなら、負荷容量を下げて発振しやすくします。

まず、下の図は、EZ-USB FX2(CY7C68013)の水晶の端子(ドライブ側)の波形です。とても元気よくドライブされていて、多少歪んでいるくらいです。振幅は4V近くあります。

fx2
(CH2は水晶の信号)

一方、次の図は、EZ-USB FX2LP(CY7C68013A)の水晶の端子の波形です。省電力タイプであるためか、CY7C68013無印に比べるとドライブが弱く感じられます。振幅は3.1Vくらいです。

fx2lp1
(CH1はCLKOUT信号、CH2は水晶の信号)

推測ですが、EZ-USB FX2LPでは定消費電力化のため、水晶をドライブするためのパワーを減らし、さらに何かの安定度に関わるファクターを変更しため、CL=12pFの水晶が要求されるようになったのだろうと思われます。



次に、回路の負性抵抗を測ってみましょう。
負性抵抗を測るには、水晶に直列に反固定抵抗を入れ、徐々に値を上げていって発振しなくなったところの抵抗値を測ります。
表面実装用の小型の水晶を使用した場合、EZ-USB FX2では1kΩ以上でも発振したのに対し、FX2LPでは約300Ωで発振しなくなりました。
また、大きめの水晶(HC49U?)を使用しても約800Ωで発振しなくなりました。
(水晶の物理的サイズが大きいと、等価直列抵抗が減り、負性抵抗が小さくても発振しやすくなる。小型の水晶ではその逆の傾向が出る。)
信号の振幅が70mVくらいになり、非常に弱々しくなります。それでも、EZ-USB FX2LPの中のPLLは動作しているようで、この弱い24MHzの信号から480MHzを作り出してくれています。
fx2lp2
(CH1はCLKOUT信号、CH2は水晶の信号)

つまり、EZ-USB FX2LPは、低消費電力化のため、発振回路の周波数特性や増幅力などをFX2よりも下げているのではないかと推測されます。



ところで、水晶を選定する上でのパラメータはいくつかありますが、
・周波数と安定度
・共振モード
・負荷容量CL
・ドライブレベル

普通は、周波数と安定度、共振モードまでは誰でも見るでしょう。
でも、なかなか負荷容量までは気にしないことが多いのではないでしょうか。
さらに、ドライブレベルというパラメータもあります。これは、水晶をドライブするパワーのことで、オーバーすると水晶の性能や精度に悪影響を及ぼすそうです。
CYPRESSのEZ-USB FX2とFX2LPではどちらも500μWとなっています。これはかなり強烈なドライブレベルです。耐えられる水晶はどれだけあるでしょう。



そういうえば、昨今の高速なシリアル通信は、マスターかスレーブのどちらかが作り出した周波数にもう一方がPLLであわせて送信受信を行うのが定石ですが、USB2.0のHigh Speedモードでは480MHzの周波数はどちらが作り出しているのでしょうか。

EZ-USB FX2LPにはCLKOUTという信号がありますが、それは通信用の480MHzを分周したものだそうです。
そのCLKOUTと水晶の周波数をオシロで見ると、整数倍の関係で位相が見事に一致していているので、USBの基準周波数はターゲットが作り出しているのでしょうか。

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