私のノートパソコンMebius「PC-MM1-H1W」が、昨年の10月に壊れてしまいました。
電車の中で電源を入れようとしたら、バッテリランプがオレンジ色に点滅して、電源が入りません。
Googleで同様の症状を検索してみると、同じような症状の人がいるようです。
まずは、メーカーのサポート係に電話してみました。すると、「リセットボタンを押してアダプタを抜き差ししてみて、それで駄目なら基板交換」とのことでした。どこが壊れているかはわからない、ということです。
それっきり修理にも出さずほうっておいたのですが、今日ふと思い立って、自分で直してみたくなりました。
久しぶりに電源を入れてみても、相変わらず橙色の点滅です。
どうせ壊れているならと、壊すのを覚悟で分解し、マザーボードを取り出しました。
以下に述べる記事は、あくまでも私のPCでの場合です。絶対に真似しないでください。真似してどのようなことが起きても、一切責任はとりません。

これが、PC-MM1-H1Wのマザーボードです。写真に写っている一番大きなチップがCruesoeです。
症状を詳しく診てみると、電源ボタンを押してから橙色のランプが点滅するまで、およそ1秒間あります。このとき、基板からかすかにカチッという音が聞こえます。この動作から推測すると、最初は普通に起動したのに何らかの異常に気が付いて、シャットダウンするような感じの動作でした。

とりあえずオシロで、いろんなところの電圧を測定してみました。上の写真に灰色の四角い部品が2個映っていますが、これはスイッチング電源用のトランスのようで、それぞれ5V用(下側)と3.3V用(上側)のようです。
基板上のスイッチング電源は、ACアダプタから供給されるDC20Vをスイッチして、DC5VとDC3.3Vを作り出しているようです。
5V側は、PCの電源が入っていなくとも、常にスイッチング電源が動作して5Vを作り出しています。
3.3Vの方は、電源ボタンを押すとスイッチング電源が動き出し、1秒ほど供給されるものの、すぐにOFFになってしまいます。カチッというかすかな音は、このトランスから出ているようでした。
3.3Vの電源を動かしたり止めたりする信号が見つからないものか、と探してみたのですが、さすがにみつかりません。
ところが、いろいろ調べているうちにあることに気が付きました。基板上に載っているフラッシュROMや、SDRAMのアドレス線やデータ線が全く動いている気配がないのです。それどころか、SDRAMやROM、CPUのまわりなどは一瞬も3.3Vなどの電源が来る気配がありません。
そこで、ちょっと基板全体を見てみると、同じ様なトランスがもう一つありました。上の基板写真では、Cruesoeの左側に映っています。
当該部分を拡大するとこんな感じです。
この部分が原因でした!

このヒューズ(F6)が切れていたのです。

ヒューズが切れたのを修理する場合、何も考えずにジャンパしてしまうというのは、非常に危ない解決策です。なぜヒューズが切れたのかの原因を追求せずにジャンパするのは非常に危険です。しかし、危険を承知でとりあえずジャンパしてみました。このヒューズにはACアダプタからのDC20Vがモロに来ています。
そんなヒューズをジャンパし、ACアダプタをつなぎます。
すると・・、ACアダプタが電流リミットにかかったようです。つまり、このヒューズの先で何かがショートしているようです。
ショートモードで壊れる部品というと、タンタルコンデンサが想像できますが、今回の原因は、タンタルではなく、チップ積層セラミックコンデンサでした。
基板上でヒューズの向こう側につながっているコンデンサを全部外してみて、テスターで絶縁チェックしてみると、あるコンデンサでテスターからブリブリ音が鳴りました。調べてみると、80Ωくらいの抵抗で導通してしまっているようです。

この写真では大分傷がついていますが、これは取り外しの際についた傷です。
ちなみに、基板に実装されている外観を眺めてもわかりません。
コンデンサの容量jは10μFと思われます。DC20Vが加わるので、耐圧は50Vくらいはほしいところです。
同じようなコンデンサが3つ並列になっているので、30μFの容量を作っていたのでしょう。
このコンデンサを外して、ヒューズをジャンパし、生きている2つのコンデンサを戻しました。
電源を入れてみると、見事にMebiusが起動しました。

ところで、原因を調べている際に、オシロのプローブでDC20Vをショートさせてしまい、5V用のスイッチング電源の積セラも壊してしまいした。スイッチング電源の1次側には2つのコンデンサが並列になっていたので、もう1個は生き残っています。
というわけで、2箇所のスイッチング電源で、コンデンサを1個づつ外した状態で動かしました。
マザーボードを筐体に納め、丁寧にネジをしめ、ハードディスクを取り付け、起動させました。
Windowsが起動しました。
・・
しかし、どうも動作中に「きゅるゅる」という妙な音がするのが気になります。5分くらいすると、突然、ブツッと電源が落ちてしまいました。
再び筐体をあけてみると、外観は特に問題ありませんでしたが、3.3V用のスイッチング電源の部分にある積セラが20Ωくらいで導通してしまっていました。そのため、ACアダプタが電流リミットでシャットダウンしたようです。
そんな状態でACアダプタをつないで1分くらいしてみると、「バシュー!」と積セラから火が出ました。
いやぁ~、大容量の積セラって、タンタルみたいに火を吹いて壊れるんですね。
しかも、導通モードで壊れるの?
積セラを取り外してみると、基板が少し焦げてえぐれてしまっていました。

今度ばかりはもうだめか、と思ったのですが、このコンデンサを取り外してみると、ちゃんと起動しました。
うーん、さすが日本製品。丈夫です。
コンデンサが少なすぎたのが問題かもしれないと思い、パーツ箱のなかから適当な10μ以上のコンデンサを探してつけることにしました。しかし、ここはDC20Vが加わる場所ですから、耐圧の大きなコンデンサが必要です。
そんな大容量で高耐圧の積セラなんてもっていないので、とりあえず、電解コンをつけることにしました。
絶対に真似しないでくださいね。

上が5V用のスイッチング電源です。トランスに不思議なシミが出ています。
変ですね、さっきまではこんなシミはなかったのに。
まぁ、細かいことは気にせず、燃えた積セラを外して電解コンに置き換えます。
手持ちの電解コンで、耐圧が20V以上のものは2個しかなかたので、CPU用のスイッチング電源には47μF16Vのコンデンサを2個直列にしました。絶対に真似しないでください。

ESRだとかインダクタンスだとかいろいろな意味で、電解コンは積セラの代わりには全くなりませんが、とりあえず容量だけは確保しました。絶対に真似しないでくださいね。
これで、電源を入れて起動してみると、ちゃんと起動しました。

やっぱり基板から出る音が少し変ですが、今度はシャットダウンすることなく、数十分動かすことができました。無理やり電解をつけたので、筐体の蓋がしまらないので放熱が激しく、CPUへの負担を考えてそれ以上の動作テストはしないでおきました。
とりあえず、RSコンポーネンツに、似たような積セラとチップヒューズを注文しておいたので、明日届いたらもう少し実験してみることにしましょう。
とにかくわかったことは、
・PC-MM1-H1Wのバッテリランプが橙に点滅して電源が入らない場合は、CPU用のスイッチング電源が動作していない可能性がある。
・その原因は、私の場合はヒューズ切れだったが、ヒューズ切れの原因は積セラのショートモードでの故障だった。
・パソコンの電源がOFFになっている状態でも、回路の各部にはアダプタからのDC20Vが加わっている。壊れたコンデンサがあると危険。バッテリ駆動でも同様に電圧が各部に加わっていると思われる。まぁそのためのヒューズなのですが。
それから、このMebiusは、もう一つ不調な箇所があるんです。
ここでも話題になっているようですが、HDDが遅くなるんです。止まっているとしか思えないほど遅くなるんです。
しかも、カランカランなんて音が鳴るんです。
私の場合、特に冬場にこの現象が起きやすいようでした。夏は快調でした。
まぁ、それでも、不調になってから2年以上、HDDがクラッシュせずに動いているので良しとしましょう。
デザインもいいし、軽いし、使いやすいので、私はこのPC-MM1-H1Wをとても気に入っています。
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