私はだいたいいつもはP社さんに基板の製造をお願いしているのですが、いま設計している基板は特別な事情があって、日本国内のある基板屋さんにお願いすることにしました。
いわゆる伝統的な基板屋さんです。
以前、「プリント基板」などのキーワードで検索してその会社を見つけました。前に見積もり依頼をしたら、わざわざ新幹線に乗って遠くから東京まで挨拶に来られたので、その件に感謝して、今回はそこにお願いしてみることにしました。
ホームページは結構立派でした。基板製造だけではなく実装もやっておられるようだし、○○見積フォームとかも複数あるので、納期や価格もすぐにわかりそうでした(後から気づいたが、自動の見積もりフォームはJavaScriptエラーで動かないし、もう一つの無料お見積もりフォームは中で人が動いて見積もり回答をよこすもだった)。
ホームページには、こんな多層基板を作ったとか、こんな細いのを作ったとか、内層Viaも作れるとか、いろいろな凄い写真が載っています。しかし、ホームページを見ても、どのくらいの細かい線幅まで作れるかとか、ドリルは何mmまでできるのかとか、内層クリアランスは何mmなのかといった、具体的な数値は一切わからない。また、どの程度の価格なのかわからない。納期もわからない。見積もりを依頼しても返事がない。電話で聞くと、ブツッ、ブツッと断片的にしか教えてくれない。
ホームページを見ると、従業員は10人ほどいて専属の営業の人もいるはずなのに、必ず社長さんが回答するのです。電話で、「○日までに欲しいなら、金曜日中にデータを送って」というので、それでもおっかなびっくり、ガーバデータを送ってみました。
すると、木曜の夜に電話がかかってきて「こんなんじゃ作れないよ!」と何か怒っています。
0.3mmのドリル径に対してViaの直径が0.5mmしかないから駄目だそうです。φ0.55mmなら良いというので0.55mmに修正しました。
金曜日の未明に「修正しました。これなら作れますか?チェックしてください」と2回目のガーバデータを送信。
すると、返事がない。
面付けするもう一種類の基板を徹夜で描いて、金曜日の朝に「デザインルールのチェックをお願いします」とメール送信。
またしても返事がない。
金曜の昼頃に電話してみるが、「社長は外出中で17時まで戻りません」とのこと。デザインルールチェックも、見積もりの回答もまだないので、戻ったら電話をくれるように頼んでおきました。
当初は面付けを向こうに任せるという話だったけど、不安なので、メイン基板9枚とサブ基板3枚を自分で面付けして、完全なガーバデータにして、4回目のメール送信。
つまり、
1回目のメール・・木曜朝 メイン基板チェックの依頼。Via直径の問題で駄目。
2回目のメール・・金曜未明 メイン基板のチェック依頼
3回目のメール・・金曜朝 サブ基板のチェック依頼
4回目のメール・・金曜昼 面付けした後の完全なガーバデータ
という感じで、4回メールを送りました。
返事が来たのは最初の1回だけで、4打数1安打。
夕方、社長さんが戻ってきたようで、電話が来ました。
「電話をいただいたようですが、何か?」
何かじゃねーよ
怒りを抑えつつも、「基板は問題なく作れそうですか?」
と聴いてみると、「ふーん、大丈夫じゃない?取数が良くなるようにこっちで20面で面付けしておいたから。もう製造に流した」
との回答。
「何ですと?その20面というやつは。私が送ったのは12面付けされたデータですよ?大9枚・小3枚。最終版のガーバデータを昼の2時ごろにメールで送ったはずですよ。」
「ああそうですか、昼から外出していたので、メール見てなかった。ちょっとまって・・」
なんと、古いデータで製造を開始しようとしていたようです。しかも、見積もりも出さずに。
「ちょっと確認しますので、あとで折り返し電話します」
とのことなので、待っていたら、電話が来ない。こちらから電話してみると、
「社長は外出しております」
とのこと。逃げられた~!
その後、社長のPHSに電話しても会社に電話しても、ぜんぜんつかまりません。
私の基板が本当に作られるのかどうか、非常に不安な気持ちのまま週末を過ごしました。
まぁ、こんな具合で非常に腹立たしかったのですが、これがいわゆる普通の伝統的な基板屋さんなのかなと思いました。それと比べると、ネット時代の基板屋さんはだいぶん違います。
●対応者
・伝統的基板屋さん・・・社長が一手に引き受けて回答。
・ネット時代の基板屋さん・・・社内データベースで情報を共有。担当者が変わっても即座に対応できる。
●製造可能な仕様(線幅、ドリル径、クリアランス等)
・伝統的基板屋さん・・・社長が口頭で回答。
・ネット時代の基板屋さん・・・製造仕様書として文書化し、ダウンロード可能。
●データ入稿方法
・伝統的基板屋さん・・・メールで送る。受け取った返事はない。
・ネット時代の基板屋さん・・・Webフォームで送る。届いたかどうかは確認できる。
●電話対応
・伝統的基板屋さん・・・ぶっきらぼうで、何かいつも怒っている。
・ネット時代の基板屋さん・・・トレーニングが行き届いていて、感じがよい。
●価格・納期
・伝統的基板屋さん・・・標準価格・標準納期はなく気分で決まる。要問合せ。
・ネット時代の基板屋さん・・・基準が明確に定められていて、Webフォームで計算できる。
●製造の工程
・伝統的基板屋さん・・・いつ製造を開始したのかもわからない。
・ネット時代の基板屋さん・・・受付完了、製造開始、製造完了のメールが届く。
というわけで、比べてみると伝統的基板屋さんの勝ち目はないわけです。
ネット時代の基板屋さんがどんどん伸びているのも至極当然な話です。
やはり次に頼むのであれば、ネット時代の基板屋さんに頼みたいと思うわけですし、つきつめて考えてみるとネット基板屋さんが伸びている本当の理由がわかってきました。
長くなってきたので、続きはJTAGひろばの日記に書きます
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