3月21日~24日の4日間にわたって、早稲田大学で開催されていた「日本物理学会」の70回年次大会付設機器展示に出展していました。
(写真は後で差し替え)
物理学の実験に使っていただけるような機械を展示する展示会が、学会の会場の横で行われているわけです。真空関係や、液体窒素、冷凍機、光電子増倍管、光学結晶、書籍などのブースがありました。
特殊電子回路はZYNQ搭載のADCボード「Cosmo-Z」を展示して、宇宙線が入るとブース全体が光るというデモを行っていました。
上の写真を見ていただくとわかるように、「さらばNIM/CAMAC」というキャッチコピーが書かれた旗が立っています。
NIM/CAMACというのは、放射線などの計測でよく使われている規格です。放射線や素粒子の世界では、NIM/CAMACのモジュールをいっぱい並べてLEMO規格の同軸ケーブルでプチプチとつないで計測システムを構築していくのですが、1つ1つのモジュールというのが「オペアンプ」とか「ゲート」とか「遅延線」とか、そういうレベルのものなのです。
この古くて高い規格に縛られるのをやめて、計測の信号処理をアナログでやるのではなく、高速ADCとFPGAを使ってより高度な測定をしようという趣旨の展示でした。
素粒子、核物理、宇宙、加速器の研究者だけではなく、プラズマや量子コンピュータなどの方からも好評をいただきました。
いろいろな方の意見を集約すると、
でした。
よく聞いた言葉で「レート」というのがありましたが、この分野では1秒間に何回のイベント(素粒子や放射線など検査対象のものが検出器に入ること)が起きるかを意味していたようで、ADコンバータの変換速度のことではないようです。
「計算上、毎秒100万回のイベントが32chすべてで発生しても大丈夫」と説明するのですが、なかなか信じてはもらえないようでした。毎秒100万回のイベントというとこの世界ではかなり多いほうなのですが、次世代ハイビジョンTVとかと比べると大したデータ量ではありません。SATAのHDD/SSDをフルに動かせば全部のイベントの特徴量を記録できます。ああ、娯楽用の民生品はなんと莫大なデータを扱っているのでしょうか。
Cosmo-Zで毎秒1Mイベントが処理できることを実証するために、疑似的な信号をFPGAで作ってシミュレーションしていかなければならないという気もしました。
Cosmo-Zの最大の難しさは、研究内容に合わせてFPGAを開発しなければならないところです。
多数のお客様が共通して必要とする機能はCosmo-Zの標準サンプルに含めるつもりだし、一応、私も物理出身なので、お客様の研究の内容はだいだい理解できてFPGAをカスタマイズできるのですが、お客様としてはやはり自分の研究室でちょこちょことした改良はしたいところだと思います。
そこで、自社ブースにこんな貼り紙をしておきました。
はい。物理系の学生さん、大募集です。仕事の内容は、FPGAの回路設計や、組み込みARMマイコンのプログラム開発(C、C++)です。もちろん、物理系の学生さんでなくても構いません。
この貼り紙をじーっとみてくれる方も結構いらっしゃいました。某研究所のお客様がいうには激レアバイトだそうです。「学生のころ家庭教師なんてやらずに、こういうことがやりたかった」と言ってくれた研究者の方も多数いました。
3日目にいろいろ聞いてきてくれた東工大の学生さん、このブログを見ていたら、ぜひ、連絡してきてね!FPGAで物理計測やりましょ!
Cosmo-Zが展示4日目に頻繁にリブートを繰り返していました。密閉されたアクリルケースに入れて運転していると、どうしても熱がこもってしまうようです。
冷却用にヒートシンクと扇風機をつけたのですが、あえてグルー(ホットメルト)で固定することにしたのです。熱くなると溶ける。すると、ファンに絡まって止まる。冷却能力がなくなるうえ、ファンが発熱してさらに熱くなる・・
展示4日目でこの状態に達しました。やっぱりヒートシンクはグルーで止めてはだめですね。アクリルの箱から出したらちゃんと最終日の最後の時間まで動いてくれました。
1日の来場者は約10人。誰もお客さんがいない暇な時間が相当あります。
向かいのブースで書籍を販売していたので、何か一冊と思い、買って読んでみました。
一言でいって、とても面白い!お客さんがいない暇なときに(いや、お客さんが来ていても気づかず)読み耽ってしまいました。
私のような専門外の人でもわかりやすくQCDが説明されていて、いままで理解できなかったゲージ変換とか、ファインマン・ダイアグラムをどう計算をするかのさわりが理解できました。なるほど素粒子の研究にスパコンが必要なわけだ、と妙に納得できるわけです。
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