MPPCとプラスチックシンチレータで遊んでます(1)
昨年度に買い込んでいたプラスチックシンチレータとMPPCをいよいよ使ってみたくなりました。
MPPCというのは、小さなフォトダイオードが寄せ集まったアレイです。1つ1つのフォトダイオードは100万倍くらいの増幅率を持っていて、フォトンのある/なしで、一定量の信号を出します。1つ1つの小さなフォトダイオードは「あり」か「なし」の二値しか出しませんが、1つのチップ上にたくさんのダイオードが集まっているので、信号を出したダイオードの数で元の光の強さが大きさがわかるという、アナログのようなデジタルのような素晴らしいデバイスです。
光電子増倍管と比べて、小型で、割れにくく、高電圧が60V程度でよく、地場の影響を受けないというメリットがあります。
なひたふが購入したMPPCは浜松フォトニクスのS13360-3050CSというものですが、初めて扱うので、最初はHVとアンプをセットにしたモジュールを買いました。
50mm×50mm×10mmのプラスチックシンチレータの横に、MPPCのモジュールを貼り付けます。あとで取り外せるよう、カプトンテープで軽く止めておきます。
そして、これを遮光のための箱の中に入れます。
アルミ等でしっかり作ってもいいのですが、まずは、ダンボールの適当な箱に「遮光シート」を貼り付けて、その中にシンチレータとMPPCモジュールを入れました。
そして、さらにもう一回箱の中に入れます。
光学用の遮光シートで二重に包まれているので、これで十分な遮光ができます。
オシロで見てみると、
ものすごい勢いで何かの信号が出ていました!
「フォトマルで作った検出器よりも信号がたくさん出ている!MPPCスゲー」と喜んだのもつかの間。これは「ダークカウント」という偽の信号でした。MPPCはどうしてもダークカウントや、アフターパルス、クロストークといった偽の信号が出てしまいます。
データシートによれば500kcps~1500kcpsということなので、かなりの数のダークカウントが見えているのも納得できます。10μ秒に5~15回くらいのダークカウントが出ていることになります。
ダークカウントは量子的な理由で出ているので、フォトン1個分の大きさが多いのですが、2個や3個の高さのものもあります。
このMPPCモジュールでは、1p.e.=17mVのようです。1p.e.、2.p.e.と段々になっているのが見えます。たまに幅が広いやつがいるのですが、複数のダークカウントがたまたま重なっているのではないかと思います。
さて、オシロで見ていると、たまに1400mVくらいの信号も来ます。
フォトン100個分の高さの信号です。こういう大きいやつはきっと宇宙線や、コンクリート内のカリウムなどの放射線由来なのしょう。
シンチレータを外してもダークカウントは大量に見えますが、それほど大きいパルスはなくなります。最大でも7p.e.くらいまでになります。
次回は、この信号をマルチチャネルアナライザに入れてみたいと思います。
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