MPPCとFPGAで宇宙線検出器を作った
持ち運びに便利な宇宙線検出器ができました。
この積みあがった黒い箱の中にプラスチックシンチレータとMPPCと高速アンプが入っていて、
そこから出た同軸ケーブルがZYNQ搭載のADCボード「Cosmo-Z」へとつながっています。
プラスチックシンチレータというのは、β線やミューオンなどの荷電粒子が入ると光るやつで、MPPCというのは微弱光用のセンサです。これらを組み合わせると、宇宙線などの荷電粒子センサになるというわけです。(検出しているのはミューオンだけじゃないけど)
基板を輪ゴムで止めているのかと思うかもしれませんが、この輪ゴムというのが絶妙な力加減を発揮してくれる弾性体であることに気が付きました。
真ん中に基板を寄せてくれるし、振動からやさしく保護してくれるし、MPPCのガラス面をぴたっとシンチレータに押し付けてくれるし、輪ゴム最高!です。
MPPCからの信号は、下の図のような感じで10μ秒に10~20発くらい出てくるのですが、ほとんどがダークカウントという偽のイベントです。
よく見ると、濃さが段になっているのがわかると思います。この1つの段が、フォトン1個分の電圧に相当します。
この信号をFPGAで処理したいのですが、Cosmo-Z(コスモゼット)には最大125MHzサンプリングの高速ADCが乗っているので、高速な信号をキャプチャしてFPGAで処理するにはたいへん便利です。
FPGAといっても、ARMプロセッサ搭載のZYNQなので、波形の統計処理までオンチップでやってくれます。
125MHzのADCはメイン基板に8ch(最大32ch)乗っているので、5個のMPPC箱をそのままつなげて、同時に処理できます。
5台のMPPCで少しずつゲインが違っているようですね。Cosmo-Zではリアルタイムにこういうのが見えるので、ゲインのずれが一瞬でわかるので便利です。
上のスペクトルを見ると、横軸0~50くらいまでのところは急に減衰して、50以上では閑散としているのがわかります。
試しにシンチレータを取り外してMPPCだけで測ってみると、
シンチレータを外したら大きいパルスが全くなくなりました。、高さ50くらいまでの信号はダークカウント(偽のイベント)だったようです。50以上のものはMPPCの発光(つまりミューオンとかβ線とかγ線とか)のようです。
スペクトルを長時間溜めていくと、こうなります。
左の方(ダークカウントの1p.e.に相当)では、10^9を超えるカウント数が記録されています。毎秒10^6回くらいのイベントが発生しているわけなのですが、
FPGAのハードウェアで処理しているので取りこぼすことはありません。
まぁ、本当はMPPCでスペクトラムがみたいわけではなく、イベントが発生した時刻とチャネル番号の情報を集めたいので、これからがFPGAの本領の発揮となります。
そもそも、なんで5chかというと、シンチレータがたくさんあれば宇宙線の飛来した方向がわかるからです。本当は16chで作りたかったのですが、うまくいかないリスクも考えてMPPCを5個しか買っていなかったためです。残りの11個は近々追加購入することになるでしょう。
持ち運び可能な宇宙線検出器ができました。とりわけミューオンを対象にしています。今のところ消費電力はトータル15Wくらいですから、モバイルバッテリでも動かせないことはありません。
いやー、ZYNQって本当にすばらしい。
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