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2016.12.22

AD7960のアナログフロントエンド用OPアンプの選定

特電ではZYNQ搭載ADボード「Cosmo-Z」の拡張ボードとして、Analog DevicesのAD7960を使ったAD変換ボードを開発しています。

Ad18


前回の記事から大分時間が経ってしまいましたが、アルバイトのスタッフが動くようにしてくれました。

ADCのVREFには4.096Vを与えているので、このボードの入力電圧範囲は±4.096Vです。

ちなみに、複数の高精度ADCを並べるときにはVREFは外部から与えます。ADCの内蔵リファレンスは1つ1つばらつきがあるので、16bitや18bitのADCではそれが無視できないからです。しかも、VREFはパルス的に電流を吸い込むので、1つ1つのADCのVREFを各々のOPアンプでドライブします。そうしなければ隣につられてしまいます。これは定石です。

アナログフロントエンドには、ゲインをx1,x10,x100,x1000と切り替えられる可変ゲインアンプが付いているので、入力のフルスケールを±4.096V,±0.41mV,±41mV,±4mVと切り替えられます。

AD7960はEN0..EN3という端子があって動作モードを設定しますが、ベストな設定は0010(外部VREF 4.096V バンド幅制限なし28MHz)でした。0001(外部VREF 5V)にすると歪が増えます。また、0010(外部VREF 4.096V バンド幅9MHz)にすると、ノイズが増えます。

また、AD7960は入力フルスケールが±VREFなのですが、VREFは4.096Vまたは5Vにしか設定することができません。そのため、アナログフロントエンドでは0V~5Vまでフルスイングできるレールツーレールな低ひずみな完全差動アンプが必要になりますが、現時点でそのようなOPアンプのは世の中にありません。

レールツーレールといわれているOPアンプでさえも、本当は電源電圧ぎりぎりまで振り切ることができません。少なくとも高精度ADCでは「ふりきれない」ことが問題になります。また、電源電圧に近いところではひずみ率が悪化しますので、1/2VCCあたりのおいしいところで動作させなければならないのです。

本目的に何とか使えそうだと思えるOPアンプとして、Linear Technology社のLT6362、Texas Instruments社のTHS4521、同じくTIのTHS4130の3種類を選定しました。

これらのOPアンプを使ってどれが最も良い性能を出すかを比べてみます。

回路の構成としては、

  • CH1 入力→AD8253(可変ゲインアンプ)→LT6362→AD7960
  • CH2 入力→AD8253(可変ゲインアンプ)→THS4521→AD7960
  • CH3 入力→AD8253(可変ゲインアンプ)→THS4130→AD7960

となっています。

sun

まずは入力を50ΩでGNDに固定して、ノイズのスペクトラムを見てみます。

プリアンプのゲインが1の場合、半値半幅(HWHM)は2LSBなので、ノイズで±62μV揺らいでいると言えます。

Gain1

赤がTHS4521、オレンジがTHS4130、茶色がLT6362です。THS4130のノイズは少し多いかもしれません。

sun

次はゲイン10の場合です。

Gain10

ノイズによる揺らぎが増えて±5LSBくらいになりました。ゲインを上げてノイズが増えたということは、これはAD8253の入力のノイズと言えます。確かにノイズも増えますが1LSBの分解能も細かくなっているので、トータルで性能は良くなっています。ゲイン10では1LSB=3μVですから、揺らぎは±15μVです。

ゲインを10倍にしてもノイズが2倍にしかならないということから、初段のAD8253と後段のアンプ+ADCのノイズが計算で求められますね。

初段でゲインを稼いだほうが精度が上がりました。

sun

次はゲイン100の場合です。1LSB=0.3μVで、フルスケールは40mVppレンジです。

Gain100

ノイズで非常に揺らいでいるように見えます。各チャネルとも半値幅はだいたい60LSBくらいなので、±30LSB揺らいでいます。1LSB=0.31μVなのでノイズは±9.3μVとなります。

sun

最後はゲイン1000の場合です。1LSB=31nVで、フルスケールは4mVppのレンジです。

Gain1000

各チャネルともだいたい250LSBくらいの幅がありますので±4μVゆらいでいると言えます。

アルバイトさんが、より正確に半値幅を出してくれて、各OPアンプでの性能を比べてくれた結果をまとめたのが次のグラフです。

ヒストグラムの幅(半値半幅)を示しています。

Opamp3

ゲイン1の場合は個々のOPアンプのノイズ性能が顕著に出ていますが、ゲインが上がるにつれてOPアンプによる違いは見られなくなってきます。

微小信号を測るならば、初段のOPアンプが重要であるこがとがわかります。また、初段でゲインを稼ぐことでノイズを効果的に抑えることができることがわかります。

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