2019.01.29
2019.01.26
2019.01.25
Cosmo-Z Miniの光版を動作テスト
真夜中に会社に来て、Cosmo-Z Miniの光ファイバ搭載版を動作テストしています。
約1mWのレーザーをLN変調器で正弦波で変調して、周波数応答のゲインを見ます。
45MHzくらいで3dBダウンし、100MHzで-20dBくらい前後という性能となりました。
これはCosmo-Z Miniのアナログフロントエンドの特性で、125MHzサンプリングなので50MHzくらいから緩やかなLPFにしています。
調整して出荷しようと思っていたのですが、この個体は125MHz動作のときになぜかノイズが増えるし、LVDSで送られてくるシリアル信号のロックもかかりにくいようです。
今日新しく実装した基板が届いたので、新しいのと比べてみたいと思います。
2019.01.21
MITOUJTAG BASIC 3.4の起動時にエラーが出てPocket JTAG Cableにつながらない
Windows7でMITOUJTAG BASIC 3.4をご利用のお客様から起動時に
システムエラー「コンピュータにDMGR.DLLがないため、プログラムが開始できません。この問題を解決するには、プログラムを再インストールしてください。」
というエラーが出て、Pocket JTAG Cableに接続できないとのご連絡をいただきました。
Windows10で確認したところ、確かにエラーの内容は「システム リソースが足りません」
となっているものの、起動時にエラーが出てしまいました。
この原因は、DMGR.DLLとDJTG.DLLがが無いためなのですが、これらはDigilentのUSB-JTAGケーブルを使うためのプラグインで、MITOUJTAG BASIC 3.4からはDigilentのJTAGケーブルに対応したため、このエラーが出るようになってしまいました。
当社のPCにはすべてXILINXの開発環境が入っていたため、このDLLも入っていたため気が付きませんでした。
Digilentのライブラリは、下記のページから
https://reference.digilentinc.com/reference/software/adept/start?redirect=1#software_downloads
Adept2 のSystem(Windows - V2.19.2)というのを入れれば入ります。
また、Pocket JTAG Cableがつながらないというのは別の問題で、デバイスドライバのあるディレクトリでdpinst.exeを実行すれば入るようになっています。
ですが、MITOUJTAG BASIC 3.4のインストールCDにはdpinstが入っていなかったようです。そのため、デバイスマネージャからインストールしなければならないなど、かなり不便な仕様になっていました。
dpinstの入っているPocket JTAG Cableドライバは下記のURLに置きました。
http://www.tokudenkairo.co.jp/jtag/download.html
この中のPocket JTAG Cableドライバ(1月21日版)をダウンロードしてください。
解凍すると以下のようなファイルが出てきます。
お使いのPCが64bitならばdpinstを実行、32bitならばdpinst32を実行します。
画面が暗転して警告メッセージが出ますが、
dpinstはMicrosoftの作ったツールなのですが、発行元不明となっていますね。
これを実行すると同じフォルダにあるデバイスドライバがかたっぱしからインストールされます。実際のデバイスが接続されていなくても、システムに登録してくれるのです。
このように2種類のドライバがインストールされました。
これでPocket JTAG Cableが使えるようになります。
dpinstはデバイスドライバのインストール作業を簡単にしてくれます。
2019.01.18
行政書士さんに内容証明を書いてもらった
前の特電の事務所の保証金が返ってこない問題で、行政書士さんに内容証明を書いてもらいました。
状況としては、保証金として約190万円をオーナーに貸しているのですが、そこからの無条件の控除が65万円ほどあります。これは仕方がありません。
不動産会社は「事業用物件は国土交通省ガイドラインの適用外。原状回復費は借主が全額払え」という主張で、原状回復費として45万円を要求しています。なので、110万円ほど引かれてしまって80万円しか返ってこないことになります。
そういう経緯で行政書士さんに相談したのですが、判例によれば『業務用物件だからといって無条件に原状回復費が借主負担にはならない』とのことでした。
これを100%借主負担にするには契約書に明記していなければならないのですが、この契約書では不十分で、この特約では100%借主負担にはできないとのことでした。
業務用物件であっても、原状回復費は家賃に含まれていると解釈し、貸主が負担するべきなのです。
つまり、
- 住宅用物件→借主負担にする特約があっても無効
- 業務用物件→特約があれば借主負担にできるが、はっきりと明記しておかなければならない
という考えです。
この考えに基づいて、減価償却や、故意や過失による汚損面積などを計算して適正な金額の原状回復費となるよう内容証明を書いてもらい、オーナーに送ってもらいました。
行政書士さんに「それでは送ってください」とメールした直後、なぜか不動産のS氏から電話が来ました。まだ内容証明は届いていないはずですが、虫の知らせ的なものでも感じたのでしょうか。
「そろそろご退去から1か月となりますが、あらためて保証金の返還について説明させていただきたい」ということでしたが、
あれ?年明けに連絡くれるはずでは?もう、年明けというには遅すぎますね。
「代理の者に任せたから」と言って電話を切っておきました。
そういえば、不動産業者は雨漏りによる汚損面積は計算したけど、故意過失による汚損面積の割合は計算してこなかったですね。
2019.01.16
いろいろな実装
Cosmo-Zを6台、Cosmo-Z Miniを4台、Cosmo-K DVIを8台実装します。
まず、届いたDigikeyの箱。Mouserと日本のXILINX代理店も入れると8箱です。
100万円分くらいの部品があると思います。
これを開けると数百アイテムの部品が出てきて絶望的な気分になりますが、自社管理の番号が付いたラベルシールを貼っていきます。
Digikeyで注文したときのInvoiceをPHPで取り込んでデータベース管理するシステムを自社製で作っていて、どの製品の製造に、何を何個使ったかを管理するためです。
こうして、シールを貼った部品を、リストに従って箱に詰めていきます。
できました。
青い箱はCosmo-Z用で、南武線沿線にある某実装業者さんに。Cosmo-Z Miniと書いた箱も、府中にある某実装業者さんに。小さい箱は山口県にある実装業者さんに。
それぞれ別々のところに送ります。
これで3種類が同時に実装されます。
15日の夜の10時から初めて、仕分けが出来上がったときには朝の4時ごろになっていました。6時間くらいかかりましたので、だいたい1人日の仕事があります。
もう、部品はおなかいっぱいです。
2019.01.13
2019.01.12
Cosmo-Z MiniとCosmo-K DVIの基板を出図
Cosmo-Z MiniとCosmo-K DVIを製造するため、基板を出図しました。
コストを下げるため、2種類の基板を1つに面付したのですが、PROTEL99SEで単純に面付すると、面付した後の基板のデザインルールになってしまいます。
そのため、以下のような場所が変わってしまいます。
- GNDとベタの接続の方法(Direct、無接続、4本など・・)
- 内層レイヤーのデフォルトのネット。GNDとかAGNDとか
- その他、個別のネットをどう扱うかといったルール
- ポリゴンと他のネットとの間の間隙
そこで、上記のGCPrevueというツールを使って念入りに見比べて(重ねて)チェックしているのですが、チェックに何時間もかかります。
ガーバはテキストファイルですが、CADが出力する丸や線の順序は毎回変わるので、単純な比較ができません。ガーバに相違がないかどうかを一発でチェックするツールが欲しいですね。
前の基板と変わっていないかどうかを念入りにチェックをした後、出図をしたら、基板業者さんから「前回の残りがあるので、それを使ってもいいか?」とのこと。
なんと、将来のリピートに備えて余分に何枚か作ってくれていたようです。前回の残りがあるのなら、それを使いたいです。
Cosmo-Z MiniとCosmo-K DVIの製造と、Cosmo-Zの製造のため、現在の部品の在庫を数えたり、足りない部品をDigikeyに発注していたら、だいたい6時間かかりました。
200アイテムくらいの発注を6つに分けて発注しました。幸い、すべて土曜日の未明に発送されました。火曜日には着くでしょう。Digikeyの中の人、ありがとうございます。
2019.01.11
前の事務所の保証金の件で行政書士に相談
本郷にある石川ビルの保証金が返ってこない件ですが、不動産会社の担当者は年明けには再度説明するといっていたのですが、連絡はありません。
言いくるめられて不当な金額を返されても困るので、こちらからの連絡は断つことにしました。そういうわけでまだ1円も返ってきていないわけですが。
A社と交渉しても平行線になると思われるので、行政書士の先生をみつけて相談しました。
いままでの経緯をまとめてみるとA社の主張は「事業用物件だから経年劣化・通常損耗は100%借主負担」ということでした。
しかしながら、判例(大阪高等裁判所 平成18年5月23日判決)によれば、事業用物件だからという理由だけで経年劣化・通常損耗も含めて100%借主に負担させることはできず、借主に全額負わせるには契約書に明確に経年劣化・通常損耗が借主負担であると明記される必要があるとのことでした。
契約書には明確な記載はありませんでした。
で、付則がこれ。
これでは通常損耗や経年劣化を乙(借主)に100%負担させるには不十分だそうです。
ここから先は、私の個人的見解です。
法律的には事業用物件だから100%借主負担、住宅は貸主負担、なんていうことはありません。その会社の慣習や何となくオーナーの利益になるように決めているのがこの業界の腐ったところだと思います。
唯一の法的根拠となるのが上記の大阪高裁の判例で、明確な記載がなければ100%借主負担にできないというものですから、「事業用物件は100%借主負担」というのは、オーナーと不動産業者の願望に過ぎないのです。
- 事業用物件→明確な記載があれば100%借主負担にできる
- 住宅→明確な記載があっても100%借主負担にできない
しかし、この契約書。何度読んでも「償却費に関わらず乙の費用にて」というのが、良心を感じさせないですね。
退去時の償却費2か月分は、内装工事とは関係なく、オーナーの利益として頂くよ、ということですから。
あと、調べていてわかったことは、敷金と保証金との違い。
敷金は物件に縛られた担保ですが、保証金はテナントがオーナーに強制的に貸し出しさせられている「金銭消費賃貸借」に過ぎないということです。物件に縛られた担保ではなく、ただの金銭消費賃貸借です。
だから、私が不動産会社に「保証金は金銭消費賃貸借だから、速やかに返さないなら契約違反だから利子も含めて払え。(契約期間は無利子だが契約終了後も無利子だという記載はないから、利子もしくは遅延損害金は当然とってもよい)」といったのも筋が通っているなと思う次第です。
それに、この契約書では、保証金の請求権を第三者に譲渡することが禁じられていないことにも気が付きました。これは契約書作成時の大きなミスです。つまり、誰かに売ってしまってもいいわけです。銀行とかに担保として差し入れることもできます。私が交渉しても埒が明かないと思ったら、その専門のプロの人に売ってしまって、その人が取り立てにいくと・・・。おお怖い。
もし、行政書士さんによる交渉がうまくいかなければ、弁護士の先生に利子も含めて内容証明でも書いてもらおうかと思います。
2019.01.10
初のCosmo-Z Mini Optを出荷
ZYNQと125MHz14bit ADCとDACを搭載し、ADCのうち光ファイバ入力が3chある、光入力型のDAQ装置「Cosmo-Z Mini Opt」を初めて出荷しました。
光の強度を0~1mWの範囲で0.125μWくらいの精度で測定できます。125MHzで14bitの測定なので、測定値は、ぴたりとは止まりません。
必ずホワイトノイズが乗ることになりますが、そのノイズによる広がり±0.5uWでした。
また、周波数特性は45MHz程度で3dBダウン。100MHzくらいなら十分に見えているという結果となりました。
125MHzサンプリングのADC/DACなので十分と言えるでしょう。
DACで光変調信号を出しながらADCで受信し、すぐにFPGAで解析するという装置がこれ1台で作れます。
いま、2台目の出荷に向けて組み立てを進めています。
2019.01.09
AD9717+THS4520で最適なコンデンサの容量は?
前回の実験の続きです。
Analog DevicesのDAC「AD9717」の出力を、Texas Intstuments社の完全差動アンプ「THS4520」で受けています。
TINAでシミュレーションしている等価回路はこんな感じです。
丸で囲んだ並列コンデンサの容量はいくらくらいが適正かということを検証しました。
AD9717を10クロックでトグルして6.25MHzの矩形波を作ります。
まずは、コンデンサの値が1.8pFの場合。
次は2.0pFの場合。
前回の検証では1.8pFが適切かなと書いたのですが、1.8pFだとリンギングが出ているので、2.0pFか、2.2pFくらいがちょうどよいかと思われます。
このTHS4520の後ろには同軸ケーブルをドライブするための2段目のOPアンプ(THS4041)が控えているのですが、初段のTHS4520のコンデンサの容量でリンギングが変わるのが見えているので、THS4041の問題ではないことがわかります。
また、1クロックごとにHLHLして62.5MHzを作った場合では差がないので、
この立ち上がり時間はOPアンプのスループットによるものでしょう。
結論を言えば、THS4520の並列コンデンサを減らしてもリンギングが増えるだけで、周波数特性が改善するわけではないことがわかりました。2.0pF~2.2pFくらいが適正な値と思われます。
スループットをさらに高めるには、後段のTHS4041の問題か、AD9717の問題かを切り分ける必要がありそうです。
2019.01.08
2019.01.06
Cosmo-Z Miniで周波数スイープして周波数特性を測る
Cosmo-Z Miniには14bit精度で125MHzサンプリングのDACとADCがあります。DACから綺麗な正弦波が出るようになったので、周波数スイープする正弦波を作り、ADCで測ってみました。
最初のターゲットとなったのは、そこらへんに転がっていたセラミック発振子。
下の図のように、Cosmo-Z MiniのDAC出力から同軸ケーブルでつないでセラミック発振子に通し、ADCで受けます。
正体不明のセラミック発振子で、12.0と書かれています。
DAC出力は0MHz~30MHzまで100kHz刻みで掃引して、そのときに受信できる正弦波のパワーをプロットしました。
原理としては、DDSとCORDIC法で周波数を変えられる正弦波を作ってDACから出力し、それをADCで受けてFFTしてピークのパワーを出すという単純なものです。だから、かなり遅いですが。
まずは、同軸ケーブル直結の場合とセラミック発振子を通した場合で比較してみます。
12MHz付近で共振と反共振が切り替わっているのでしょう。なんとなく正しい感じがします。
村田製作所のWebサイトにある資料を見てみると、共振周波数でインピーダンスが10Ω程度まで低くなるようです。
この測り方だと同軸ケーブル直結のラインに近づくはずなので、正しいのかなと思います。
今回使用したセラミック発振子は形状や値から、おそらく村田製作所のものではなさそうです。スプリアスがたくさん見えています。
次に同じことを水晶振動子でもやってみました。水晶には10pFくらいの適当なコンデンサを入れています。水晶振動子は共振周波数付近でLとしてふるまうので、これで共振回路になるはずです。
0~62.5MHzまで10kHz刻みでスイープして測ったところ、10MHz、30MHz、50MHzの3箇所で鋭いピークが得られました。
3つのピークが同じくらいのレベルです。これだと10MHzで発振しないかもしれません。スイープする刻みが広すぎたかもしれないので、9.9MHz~10.2MHzを1kHz刻みでスイープしてみました。
すると、
10MHz弱のところに-10dBまで伸びる鋭いピークが出ていて、しかもピークは2つあるようです。
DACから綺麗な正弦波が出せるようになったので、ADCと組み合わせて周波数スイープして特性を測る試験ができました。
発振子は結果が予測できるのですが、何か測ってみて面白いものはないかな?
2019.01.04
AD9717の出力バッファの周波数特性改善
綺麗な正弦波が出せるようになったので、次に、周波数特性の改善を図ります。
周波数特性を下げている原因はOPアンプの性能と、帰還抵抗に並列に入ったコンデンサです。
THS4520を使ったCosmo-Z Miniの本番機を何とか用意し、帰還抵抗の並列コンデンサを1.5pFに交換しました。
そして、AD9717からLFSR(疑似乱数)を出しました。
LFSRの値が2bitや3bit続く部分と1bitで切り替わる部分の振幅を見ると、振幅は出ているので周波数特性は足りていると思われますが、若干、リンギング気味であることがわかります。
最終的な出力ではなく、完全差動アンプの出力を見てもリンギングが出ているので、出力アンプではなく、初段の完全差動アンプの問題なのでしょう。
一方、ゲインを変更せずに499Ω//3pFにしているほうは、高周波でのゲインが不足気味です。
最適な値は1.8pFくらいではないかと思うのですが、手元に1pFのコンデンサしかなく作れないので、今日のところはここまでにしておきます。
最終的に出した綺麗な正弦波は、
です。
やはり振幅が大きいと高調波が-70dBくらいになるので、振幅をめいっぱい出さずに0.5Vくらいにしたところ、高いところまで伸びた周波数特性と、-80dBの歪率を達成できました。
100MHz程度であっても簡単ではないですね。
特性の良いDACやADCを作るのはかなり試行錯誤が必要です。
2019.01.03
AD9717の出力を±1V振る
一昨日のシミュレーションによって、AD9717で作ったDACから±1Vの振幅を出すには、完全作動アンプの帰還抵抗を大きくすればよいことがわかりました。
しかし、帰還抵抗を499Ω→2kΩに増やしたところ、再び波形にひげが出る現象が再発してしまったのです。
このヒゲを抑えるには、完全作動アンプの入力抵抗を減らせばよいのですが、電源をONにしたまま抵抗をいろいろと取り替えていたら、AD9717が出力を出さなくなってしまいました。
どうやら通電中の抵抗交換によって壊れてしまったようです。テスト用のCosmo-Z Miniはもう予備がないので、古い試作機を出してきました。
試作機と本番機では、完全作動アンプの型番が違います。
試作機ではTHS4521という低消費電力で遅いタイプのものを用いていました。とりあえずこの基板で実験してみます。
現在の回路の等価回路を示します。
帰還抵抗が2kΩ//3pFで、入力抵抗が499Ωです。この電流源がAD9717です。Viと書かれた部分の電圧をオシロで測ります。
まずはデフォルトの回路。入力抵抗499Ωで、帰還抵抗が2kΩです。1.25V付近を中心に大きく振れています。
次は、完全作動アンプの入力抵抗を100Ωに減らした場合の波形。だいたい1V前後で振れています。この場合はヒゲが出なくなりました。
原因はよくわかりませんが、AD9717の出力にヒゲが出るかどうかは、Viの部分(つまりAD9717の出力端子)の電圧が関係しているものと思われます。
とりあえず100Ωと2kΩで振幅約1Vの綺麗な正弦波を作ることができるようになりました。
THS4521を使ったCosmo-Z Mini試作機から出した正弦波を、Cosmo-Z Miniに入れて測ってFFTしてみました。
高調波は-70dBくらいでした。
THS4521は周波数特性が悪いのによく頑張っているなという印象です。
2019.01.02
TINAを使ってAD9717用の完全差動アンプをシミュレートする
ADコンバータ「AD9717」の出力バッファにふさわしい回路を設計しようと思って、TINAというシミュレータを使ってみました。
AD9717はAnalog Devices社の電流出力タイプのDACで、DACの値は2つの端子から出る電流の差とで出てきます。これをTexas Insturments社の完全作動アンプTHS4520でバッファします。
そこで、シミュレーションでは2つの電流源を使ってAD9717を模擬します。
まず、現在の回路を示します。
現在の回路では、AD9717のリファレンスには16kΩを使っているので、Iodiff=2mAとなります。DAC値が16383のとき、PとNから出る電流の差が2mAになるということです。
TINAでは、変化する電流源を作るには「電流ジェネレータ」を使えばよいようです。
電流ジェネレータを使うには、DCレベルで電流源のDC成分を決めて、
このシグナルというところをクリックするとダイアログが開いて電流波形の詳細を決められます。
シグナルエディタで、交流の振幅と周波数を決めます。2つある電流源のうちN側の電流ジェネレータは位相を180degにしておきます。
これで1mAを中心に0~2mAまで振れる差動電流源ができました。
この状態で、とりあえず電圧を確認してみましょう。
青が回路の入力(Vip)の電圧で、緑が出力電圧(Vop)。差動ではなくGNDを基準にしたシングルで見ています。
入力端子の電圧(Vip)は、電流源のソースにあるコモン電圧(図ではGND)が何Vであっても、同じ値を中心に振れます。
なぜならば、OPアンプの入力端子はVipとVopの両方から499Ωでつながっているので一定値となり、入力電圧(vip)は、その電圧+Iip*Riとなるためでしょう。
それゆえ、電流源が何Vでドライブされるかは気にしなくてよいようです。
今回の回路では、DACがIodiff=2mAで振ったときに、出力電圧は-0.5V~+0.5Vまで振れることがわかりました。これは実機と一致しています。
12月30日の検証では、RSETの抵抗値を32kΩにしてIofs=1mAに減らしたほうが歪が減ることがわかりました。
この場合もシミュレーションしてみましょう。
結果、入力電圧は1.0Vを中心に±0.25V振れ、出力電圧は0Vを中心に±0.25Vで振れることがわかりました。
振幅が半分になったので計算どおりですが、汎用のDACとしては少し出力振幅が小さく、使いづらいものになってしまいます。
そこで、THS4520のゲインを上げることにします。この回路ではR1,R2はゲインには影響せず、R3,R4がゲイン(トランスインピーダンスゲイン)に影響することがわかっています。
ぶっちゃけ、差動出力電圧はVodiff=Iodiff×R3となります。
DACの出力が差動で測って±1mAなので、図の回路では±1mA×499≒±0.5Vとなります。
出力電圧を差動で測ってみた結果を示します。確かに差動で測って±0.5Vで振れています。
実機をシングルエンドで測ると±0.25Vとなって、一致することが確かめられています。
R3,R4の抵抗を上げればゲインが上がることがわかったので、上げられるところまでゲインを上げてみましょう。ここではR3、R4を2.49kΩにしてみます。
本当にゲインは5倍になるでしょうか。
とりあえず、R1とR2はゲインに寄与しないことがわかったので0Ωにしました。
その結果、差動出力電圧は±2.5V、シングルエンドでは±1.25Vで計算どおりの答えが出ました。
しかし、4.99kΩにしても最大で振幅は4.5Vまでしか上がらない。OPアンプは完全に電源電圧までは出せないのでその限界なのでしょう。また、電源電圧近くでは歪も増すので、このOPアンプのゲインを決める抵抗は2.49kΩくらいにしておくのが無難といえるでしょう。
ゲインを上げる弊害はないのでしょうか。あります。
ゲインを上げると周波数特性が犠牲になります。
TINAで周波数特性を測るには、入力となる電圧源が必要なようです。
下の図がその測定用の回路図です。
TINAでは2つの電圧計を配置し、Vidと書かれたほうのプロパティをIOステート Inputにすると、Vod/Vidをグラフにしてくれるのだろうと思われます。
TINAでAC解析をしようとすると、「入力が必要です」というエラーが良く出るのですが、入力となる電圧計(または電圧源)を1つ決めておけばよいのではないかと思います。
まずは、帰還抵抗499Ω//3pFのときのデフォルトの回路。100MHzまで増幅しても-2.6dBなので、かなり優秀です。
ところが、トランスインピーダンスゲインを稼ごうとして帰還抵抗2.49kΩ//1pFにすると、100MHzでのゲインは25dBも下がってしまいました。
最終的に決まった回路は次の図のとおりです。
OPアンプの入力にあるR1とR2の抵抗を100Ωにしました。
R1とR2はDCゲインには影響しないのですが、ACゲインには影響するようです。今回は電流-電圧アンプとして使っているのですが、電圧-電圧アンプではR1、R2が小さいと大きなゲインを求めることになるので、OPアンプの周波数特性が低下する。同じことが電流-電圧アンプでも起きているのでしょう。
しかし、R1、R2が大きくすると、電流源のソースとなる電圧を大きく振らなければならないので、DACの出力電圧の限界もあるのであまり大きくすることはできません。
その中庸として100Ωを選びました。DAC出力に必要な電圧は約2.5Vとなりました。この2.5VをAD9717が出力してくれるかどうかは実機で検証する必要がありそうです。
いずれにせよ、シングルエンドで±1.25V、差動で±2.5V出るようになりました。
また、帰還抵抗に並列に入れたコンデンサを減らすことで、100MHzでのゲインは9dBほどのダウンに抑えられました。
THS4520の周波数特性は600MHzだったと思うので、こんなものかもしれません。
3dBダウンとなる周波数は60MHz程度で、アンチエイリアシングフィルタだと思えば丁度よいくらいに仕上がりました。
2019.01.01
あけましておめでとうございます
あけましておめでとうございます。
ようやくオフィスの引っ越しも落ち着き、開発に集中できる環境が整ってきました。
今年は、昨年やり残した1Gsps ADCの発売開始やCosmo-Zの改良、Spartan-7ボードの開発など、製品開発に邁進したいと思います。
最先端の電子計測を応援する、インテリジェントなFPGA&DAQ製品を次々と出していきます。
特電の新しい製品にどうぞご注目ください。
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