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2020.11.08

半導体のジャンクション温度とパッケージ

電源回路やOPアンプなど発熱する回路の設計をしていると、電源ICの許容電流だけではなく最大損失に気を付けなければなりません。ICが電力を使用すると発熱しますが、その発熱がICのチップ自体を温めるので、許容された最大の温度を超えないように注意しなければなりません。

ICのチップ自体の温度をジャンクション温度といい、動作時の最大温度が決められています。

ジャンクション温度はICのパッケージの中にあるので直接測定することはできません。そこで、ICのチップ(ジャンクション)の温度がケースを伝わって来るときの熱抵抗を使ってチップの温度を推定するということが行われます。

下の図のように、ICのチップからケースを伝わって表面に熱が伝わってきます。このケース表面の温度をTc1とし、ジャンクションからケース表面までの熱抵抗をψjt(プサイジェーティー)といいます。ケース表面から周囲の環境への放熱の熱抵抗をθcaといいます。θca+ψjtを合わせてθjaといいます。

Tj_20201110095801

実際のIC(TPS736xxというドロッパ型電源IC)の熱的特性を見てみると、下の図のようになっています。この数字が大きいほど熱抵抗が大きい=放熱が悪い、ということになって、数字が小さいほうが放熱が良いということになります。

Tps736xx_thermal

最大許容損失の計算にはθjaがよく使われます。いろいろな経路で熱は放熱されますが、すべてを総合した値がθjaです。θjaと発熱による損失[W]をかけた値から、

Tj=θja×Pd+Ta・・・ジャンクション温度(℃)=熱抵抗(℃/W)×発熱(W)+周囲温度(℃)

と推定されます。

このICでは動作時のジャンクション温度は-40℃~125℃とされているので、この式にあてはめていくと、周囲が25℃のときにSOT23ピンのデバイスに許される電力損失は、

125>221.9×Pd+25

Pd < 0.45Wとなります。この電源ICを5V→2.5Vへの降圧で使うならば、最大電流は180mAまでに制限されます。

このように、発熱が見込まれるICでは、最大ジャンクション温度にも気を付けて設計(部品選定)しなければなりません。

さて、このICには3種類のパッケージが用意されていますが、その熱抵抗の大きさは下の図のとおりです。裏面に放熱パッドがあるVSON(QFNのように足が出ていないタイプ)が最もよく、次に大きなフィンが出ているパッケージとなって、一番悪いのはSOT23の使いやすいパッケージとなっています。

Thermal_res_20201110102101

実装がしやすく(手はんだでも容易)、物理的なサイズも小さいSOT23が最も悪いのですね。STO223はパッケージが分厚いのでパッケージからの放熱は悪いのですが大きなフィンから放熱できるので、θjaは小さくなっています。これはなんとなく納得できるかと思います。

θjaの値はだいたいどのくらいなのかというと、いろいろなメーカーのICでいろいろな種類のものを見て総合した結果ですが、

  • QFN/CSP・・20~50
  • BGA・・20~30
  • SOIC+PowerPAD・・40~50...100
  • QFP(50~100ピン程度)・・50
  • SOIC・・125
  • SON(電源IC)・・50
  • MSOP/SON(OPアンプなど)・・130~150
  • TSSOP/VSSOP・・180~210
  • SOT-23・・170~250

くらいです。

ざっくり言うと、パッケージが小さくなると放熱が悪くなります。

1.27mmピッチのSOICよりも、0.5mmピッチのTSSOPやVSSOPのほうが放熱が悪いので熱くなります。それを劇的に改善するのがパッケージ裏面のサーマルパッドです。QFNのICはほとんどどれも裏面にサーマルパッドが出ているので、放熱はとても良くなります。

そのかわり基板がすごく熱くなりますね。もし、サーマルパッドで基板に放熱しないことがどんなに悪いことが起きるか想像がつくと思います。

BGAはそれほど放熱はよくありません。やはりボールだから密着が悪いんでしょうかね。でもピン数が増えてくると放熱はよくなります。

 

それから、熱特性のinformationに、ψjtやψjbという項目があるかと思います。これは半導体表面温度とジャンクション温度との差を示すパラメータで、

Tj=ψjt×pd+Tc

のようにして使います。θjaと何が違うのかというと、ψjtはパッケージ表面温度を放射温度計で測ってそこからジャンクション温度を推定するのに使います。設計のときにはθjaを使って最大許容損失を求め、実際に測定するときにはψjtを使うとよいようです。

Texas InstrumentsのICはψjtはとても小さい(一桁~20くらい)なので、パッケージ表面の温度とチップの温度の差は5℃とか10℃とかそのくらいと推定されます。

だから触ってアチッとならなければ大丈夫なのです。

 

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