鋭いパルスを作る回路
信号の反射等を見るために、立ち上がりの鋭いパルスを作る方法を検討しています。
おそらく世の中にあるICの中で一番簡単に取り扱えて、かつ、立ち上がりの速い信号が出せるものってFPGAのI/Oだと思うのですが、今回は同軸ケーブルをドライブするので、FPGAのI/Oから直接取り出して壊れたら嫌です。何か別の方法を考えています。
ディジタル信号のバッファICというと、74LVTシリーズとか245とかを思いつきますが、適当なICをいくつか選んでデータシートを読んでみると74ABTは立ち上がりが3nsくらいで、ALVTが1.8nsくらいなので、1~3nsくらいが74シリーズの限界といったところなのでしょう。
他の方法をいくつか考えてみます。
ADCLK914
まずはクロックドライバというICを使う方法。例えばADCLK914は100psのrise/fall Timeを実現しています。
やはり近代的なICは違いますね。一気に20倍の速さです。ただ、クロックドライバというと中にPLLを持ったりしているものもあるので、単発のパルスを通せるかどうかは要検討です。
こういう高速なICは信号のLレベルが0Vではなく差動信号で出ています。ADCLK914を3.3Vで動作させる場合はH/L出力の電圧は2.9V/1.0Vくらいになるようです。つまり、LVDSでADCLK914にパルスを入れたとすると、Lのときに0Vにまで落ちません。
また、クロックドライバというICは本来は基板上で使うものなので同軸ケーブルを駆動するのはちょっと不安があります。
ADCMP553
次は高速コンパレータを使う方法です。ADCMP551~553というのがあります。型番によって中に入っているコンパレータの数が違います。
使い方はコンパレータで、-の端子にリファレンス電圧を入れておいてもよいし、LVDSを使って駆動してもよいと思います。
3.3Vで動作しRise,Fall Timeは0.5nsくらいです。
PECL、CML、LVDSについて
このような高速のICになるとPECLとかLVPECLやCMLという名前を聞くようになってきます。LVDSが1.25V付近でこちょこちょ動いているのに対してPECLは3.5V付近で、LVPECLは2V付近で動きます。CMLは各社それぞれです。
回路的にはCMLは差動増幅器で出来ていて下の図のような構造をしています。下の図はバイポーラトランジスタで描いていますがMOSFETでも作ることができます。CMLではトランジスタを非飽和領域で動かすため高速動作が可能です。
LVDSはCMLと似ていますが、負荷がMOSFETになって3.5mAの定電流で駆動されています。
CMLの出力にエミッタフォロアが付いているのがPECL/LVPECLです。
速度はLVDS<PECL<CMLなので、高速な信号を出したいならばCMLが一番速いということになります。LVPECLでは出力を終端電圧VTTにひっぱるための終端抵抗が必要で、VTTはVCC-2Vとされています。
ただ、CMLは信号電圧が各社で統一が取れていないのが困りもので、振幅はあまり大きくありません。
SN65CML100D
最後はLVDS→CML変換ICを使う方法です。
こんな普通の8ピンSOPで高速ICっぽくない見た目なのですが、意外とすごいのです。使い方は簡単でA-BにLVDSまたはPECLまたはCMLのロジック信号を入れると、YとZからCMLロジックで出てくるというものです。
データシートに記載されている波形は
となります。差動信号をCMLに変換するだけではなくて、AにシングルエンドのPECL信号を入れて差動信号のCMLに変換するという使い方もできます。
Rise/Fall Timeは300psと最初の2つのものと比べると遅いのですが、速いものが必要であれば同じピン配置で70psのOnsemiのNB6L16DGというのもあります。
また、SN65CML100Dは1.8V電源で動くというのもメリットです。Hの出力は約1.8V、Lの出力は約1.0Vになります。
LVCMOSなどのシングルエンドのロジックICだと2nsくらいが限界で、それより速くするならばCML出力のロジックICやコンパレータを使えばよいということです。
なお、こういったICの中身を理解しようとシミュレーションを行って、似たようなものをトランジスタで作れないかを検討しているのですが、まだうまくいっていません。
なお、ケーブルドライバ用のDS15BA101という専用のICがあるようなのですが、このICについては今度検討することにします。
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