OPアンプの歪率を下げる
FPGAとDACの間が安定してきたので、次はDACの出力を如何に崩さずに同軸ケーブルまで出すかを考えます。
まずDACの出力を完全差動アンプで受けて、その出力をケーブルドライブに適したOPアンプでバッファと増幅をして出力しています。
試しに完全差動アンプ直後での歪率を測ったら-80~-86dB程度でした。(DACの出力は差動の電流出力なので直接測ることは適切ではない)
そもそもこのDACのSDFRは-80dBくらいなので、十分なのでしょう。
さて、これをOPアンプでシングルエンドの信号に直すわけですが、OPアンプの構成には、反転アンプ、非反転アンプ、差動アンプと3種類の作り方があります。
最初、この出力段OPアンプを通った信号の歪率が-55dBくらいだったので非常に悩みました。
大きな原因は電源電圧を±2.5Vで運用しようとしていたことでした。
使おうとしていたOPアンプ(AD8021)はレールツーレールではないので、電源±2.5Vでは±1Vを出すこともきついのです。これを改善するには電源電圧を±5Vに上げるしかないわけです。
それから、OPアンプの種類も重要で、AD8021だとどうしても-60dBまでしかいかないのに、THS4041やOPA211だと-80dBをクリアできたのです。まったく同じ回路構成なのにです。
さんざん悩みましたが、OPアンプによって歪は1/(1+Aβ)で圧縮されるからゲインを下げるようなことはしちゃいけないのかもしれないと思い、帰還コンデンサを外してみました。
するとなんと、歪率が劇的に改善したのです。
OPアンプの回路構成をいろいろ変えて実験してみたところ、次のような結果になりました。
- 反転アンプや非反転アンプ、差動アンプといった構成の違いはあまり影響しない
- AD8021は33pFの帰還コンデンサを付けると歪率が悪化する
- 電源電圧は高い方がよい
これで、AD8021を出力段に使って-80dBクラスの正弦波を出すことができるようになりました。
THS4041やOPA211ではだめなのかというと、だめなのです。OPA211は計測用のOPアンプでケーブルドライブを想定していませんし80MHzまでのものなので20MHzや30MHz付近の信号を生成した場合に力不足です。THS4041は、2以上のゲインを持たせた場合の周波数特性はD8021のほうが優れます。
だから、高速でパワーのあるDAC出力を作るためにはAD8021が使いたかったのです。
あと、測定器の中のLPF(80kHz)をONにすると、100kHzの正弦波を入れた場合の歪率は-120dBまで下がりました。200kHzや300kHzの成分が抑圧されたためでしょう。
一方、5kHzの正弦波を出力して19kHzのLPFをONにしても、-80dB程度であまり変化はしませんでした。
以上のことから、
- 歪の原因はDA変換に起因するカクカクである
- 出力段OPアンプによる歪率の悪化はない
と推定されます。
これでようやく究極のDACボードの完成に近づきました。
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