差動信号のフィルタ回路
あるお客様から、差動ラインのフィルタを以下の図のように変形できないかという問い合わせがありました。
差動のそれぞれのラインに入っているコンデンサをまとめてしまって2倍の容量にできないかということです。
これらの回路の特性をシミュレーションしてみました。
使っているシミュレータの都合上、電圧源から2つのトランスを使って正負のバランスが取れた差動信号を作っています。
① 最初は正と負のラインに個別にフィルタが入っている場合を解析します。
この回路は、CR時定数以上ではCが小さくなってRが支配的になるため、50Ωと50Ωで分圧されて半分になった電圧が届きます。つまり、LPFとして働きます。
② 真ん中の部分を導通させた場合、差動信号ですから、真ん中の部分は正と負の電圧が釣り合って常に0Vになります。
33pFのコンデンサの両端は0Vになるので存在していないのと同じとなり、フィルタとしての機能は失われます。
周波数によらず電圧を1/2します。
③ 差動の線間にCRを挿入した場合、
これはLPFとして働きます。
つまり、①と③の場合はLPFとして働き、②の場合はスルーします。
次に、コモンモードノイズに対する特性を見てみましょう。
④ 最初の回路に戻ってコイルのつなぎ方を変え、信号源から同相信号として伝わるようにします。
周波数特性を見るとLPFとして働きます。
⑤ 真ん中の部分をショートさせた場合
今度は同相信号なので、真ん中の部分の電圧は0Vになりません。そのため、通常通りLPFとして働きます。
⑥ 最後は線間にCRをつけた場合。
CRのフィルタ間の電圧は、同相信号ですから0Vなので、このフィルタは存在していないのと同じになります。
そのため、フィルタとしては働かずフラットな特性になります。
まとめると、
① GNDとつながるフィルタは同相ノイズに効き、差動成分にも効く
② 中央でいったんまとめるフィルタは同相ノイズに効き、差動成分には効かない
③ 差動ラインを横切るフィルタは同相成分には効かず、差動成分に聞く
ということになります。
このことはCRフィルタだけではなく、LCフィルタやLCRフィルタにも言えます。上手に使えば差動信号に対する周波数特性や、同相信号の対する周波数特性を別々に設定することができます。こういった回路は、差動信号をケーブルで伝送するパルストランスの周辺や、ADコンバータの入力端子などで見ることがあります。
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