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2024.04.08

最強OPアンプ決定戦

Cosmo-Z/Cosmo-Z Miniのアナログフロントエンドに入れる最強のOPアンプを選定中です。

要件としては、

  • 非反転増幅回路で使いたい(入力インピーダンスを1MΩにするため)
  • ゲイン1倍とゲイン10倍を切り替えたい
  • 50MHzくらいまでは使いたい
  • 5ピンまたは6ピンのSOT-23

で、こういう回路を作ります。

候補として挙げられたのは、LMP7715、AD4841、LTC6228、LTC6252の4つです。過去に実験したところではLMH6624やLMP7717やLMP7731はゲイン1で使えないので×でした。また、LMP7715は歪が出て使い物にならなかったのですが歪の出方についてもより詳しく調べてみました。

 

まず、LMP7715の歪ですがボルテージフォロアを組んでみたところ、今回も歪が出ました。

100kHzだとちょこっとした歪ですが、周波数を上げていくとこの歪が拡大していって、

Lmp7715100khzgain1

1MHzだと大きく歪んでしまいます。

Lmp77151mhzgain1

ただし、この歪はゲイン11にすると出ません。この歪がLMP7715自体の問題なのか、アナログスイッチを介したフィードバックが原因なのかはわかりませんが、可変ゲインアンプには適していないという結果でした。

(常にゲイン11で使えばいいではないかと思うかもしれませんが、OPアンプの出力がオーバーフローすると波形に鋭い角が出てノイズを撒き散らすので、アナログスイッチで切り離していてもノイズが乗ります。)

 

次に、100KHzの正弦波をゲイン1でバッファしたときのスペクトルを比較してみます。

まず、LMP7715。上の歪によって多くの高調波が出ています。

Lmp7715100khzfftgain1

次はADA4841。高調波は増えません。

Ada4841100khzfftgain1

次はLTC6228。高調波は増えません。

Ltc6252100khzfftgain1

次はLTC6252。高調波は増えません。

Ltc6228100khzfftgain1

LMP7715以外はどれもいい感じです。

 

次は入力信号を弱めて、ゲイン11のアンプを利かせてみます。

まずはLMP7715。ゲイン11で使う分には全く問題ないようです。

Lmp7715100khzfftgain10

次はADA4841。これも問題ありません。歪がすくなく綺麗なスペクトラムです。

Ada4841100khzfftgain10

次はLTC6228。ちょっと何か見えますが、高調波ではなさそうです。

Ltc6228100khzfftgain10

最後はLTC6252これも綺麗です。

Ltc6252100khzfftgain10

 

次はノイズのヒストグラムです。OPアンプをバイパスした場合。

だいたい2LSBくらいでしょうか。

Histnoamp

次はゲイン1のOPアンプを通した場合。ほとんどノイズは増えません。

Histgain1

OPアンプをゲイン11にした場合。ADA4841はノイズが増えません。

ノイズの増加量はADA4841(+0.8LSB) < LMP7715(+1.1LSB) < LTC6252(+2.2LSB) < LTC6228(+3.6LSB)でした。LTC6228はちょっとオフセットが大きいかもしれません。

Histgain10

最後に周波数特性の比較をしてみます。

Freq

LMP6228とLMP6252の周波数特性は極めて優れています。特にLTC6228を使った場合はアンプ無しよりも特性が良くなっています。

以上の結果をまとめると

  • ホワイトノイズの増加を抑えたいならADA4841
  • 周波数特性を重視するならLTC6628
  • 周波数特性はそこそこ必要で、オフセットの増加も押さえたいなら、LTC6252

という感じになりました。

●LMP7715

Vn=5.8nV/√Hz、In=0.01 pA/√Hz、GBW=17MHz、Voffs=0.15mV(max)、IB=1pA、Iop=1.15mA、418円

●ADA4841

Vn=2.1nV/√Hz、In=1.4 pA/√Hz、GBW=80MHz、Voffs=0.3mV、IB=3uA、Iop=1.1mA、805円

●LTC6228

Vn=0.88nV/√Hz、In=3pA/√Hz、GBW=890MHz、Voffs=0.25mV(max)、IB=16uA、Iop=16.5mA、1066円、もうすぐディスコン

●LTC6252

Vn=2.75nV/√Hz、In=3.6 pA/√Hz、GBW=720MHz、Voffs=0.35mV(max)、IB=0.1uA、Iop=2.9mA、790円、もうすぐディスコン

 

LMP7715は1MHzくらいまでの用途でゲイン10以上で使うのであればベストです。入力バイアス電流が1pAなので入力インピーダンス1MΩでも飽和しません。それ以外のOPアンプだと入力バイアス電流で飽和してしまいます。

ADA4841も数MHzくらいまでならバランスが取れていて良いでしょう。

10MHz~50MHzくらいでも使いたくてゲインを10倍にしてもそこそこの周波数特性が欲しいとなるとLTCシリーズになります。

LTC6228が性能としては最高なのですが入力オフセット電流が16uAもあります。オフセットキャンセルという機能があるようなので、これをONにすれば1uAまで減らすことができるそうです。

あと、上に挙げたLTCはもうすぐディスコンなのですが、LTC6268という新しいのが出ているようなので、これも試してみたいところです。

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