私が最近はまっているものに、高周波回路の勉強があります。
先々月くらいに、「アンテナと一体化しているLC回路のトリマーを回して、感度を最良にする調整方法を考える」、という仕事の依頼を受けたためです。
とりあえず、その正体不明なアンテナを1台借りてきて、アンテナのインピーダンスを測ったり、感度が最良になるように手探りでトリマーを合わせて、そのときのCの値を測ったり・・と、地道な作業をしていました。
そのアンテナはなぜか30MHz付近で強く共振するという特徴があるのですが、その共振が本当にアンテナの特徴なのか、それともたまたま測定している部屋の鉄筋で共振してしまっているのか。それすらわからない日々が続いていました。
今日、そのアンテナと測定器を持って会社の外に出て、十字路の真中で測定してみましたが、やはり30MHzで共振するではないですか!
天井と四方がオープンになっている環境でも共振するっていうことは、どうやら建物の部屋で共振していたわけではなかったようです。
実物のアンテナを測る傍ら、アルバイトの学生さんに電磁界シミュレータを使ってそのアンテナの解析をしてもらっていました。誘電率を変えたり銅箔の面積や形状を変えたり、といった作業です。シミュレータの解析結果と、実物を実測したインピーダンスが一致すればOKなのですが、なかなかうまくいきません。
(その学生さんはわざわざ大学の高周波回路の講義を履修してくれるなど、とても熱心です。)
電磁界のシミュレーションには、ある書籍の付録についているSONETというソフトを使っているのですが、このソフトはどうやら裏面がベタGNDの両面基板を想定しているようで、さらにはポートの設定の意味がややこしかったりで、使い方がよくわかりません。
単純な一本の銅線をインピーダンスを解析したら、常識的に考えても低いはずの周波数で「コンデンサ」的な振る舞いになったりと、なかなか思うように動いてくれませんでした。
あるとき、片面基板を解析するには誘電体の層が何メートルもあるような基板を仮定すればよいのだということに気づき、ついに実測と合う結果が出るようになりました。目的の周波数でのインピーダンスが実測とよく合い、また、40MHz程度で共振するという特徴も再現できたのです。
基板の形状をより実物に近づけると、共振周波数はより実物に近づきました。
アンテナや伝送線路に特異な周波数特性が見られる場合には、単純に寄生したLCで共振回路ができているか、もしくはある周波数で特異な特徴を発揮するような形状をしているか、のどちらかではないかと思います。
今回のアンテナの共振は、アンテナのもつL成分と、アンテナの電極と電極の間のCの成分によって単純に共振回路ができていただけのようでした。周囲の状況によってキャパシタンスが変わったり、インダクタンス分が変わると共振の周波数も少し変わります。
30MHzでの共振という特性は、今回のアンテナでは全く使わない特徴でしょう。
また、アンテナとセットになったトリマーとコイルは、インピーダンスマッチングのための回路だろうとは想像できたのですが、実測したLやCの値から計算しても、どうしてもマッチングしません。それに、LやCの配置が変です。普通はこういうマッチング回路はつくらないだろう、という配置です。
回路シミュレータを使って頑張って調べたところ、コンデンサをある値にセットした際に、かろうじてマッチングすることがわかってきました。

2つあるトリマーの1つを回すと、スミスチャート上のある円上を動くはずです。もう一つのトリマーを回すと変な方向に斜めに動くはずです。斜めに動くトリマー②を回してレジスタンスをある範囲に合わせて、もうひとつのトリマーを回せば50±0jに合わせられるはず、と思ったのですが、やはり実際は少し違うようです。うーん、謎。
そんな感じで高周波回路を勉強しているのですが、一つ感じたことがあります。
今回使ったSパラメータ解析ソフト(や比較した他のいくつかのソフト)は、周波数を変化させてスミスチャート上の軌跡を見ることはできますが、トリマーやコイルを調整したときの軌跡を見る機能はないようでした。
普通、トリマーとかって1箇所じゃないので、2つ以上の調整箇所があると、Sパラメータはスミスチャート上で矩形(曲がった矩形)や扇形を示すはずです。
調整箇所が1箇所なら軌跡を頭でイメージするのはたやすいですが、調整箇所が2つも3つもある場合それらを回すとスミスチャート上にどういう領域を描くかをイメージすることは難しいのではないでしょうか。特に、アドミッタンスチャートのお世話になる場合の挙動はイメージしづらいです。
そういうわけで、LやCの調整に役立つ、Sパラメータ解析ソフトを作ってみたくなりました。
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