TFAのディジタル化
放射線の計測、特にゲルマニウム検出器(HPGe)などでは、TFA(Timing Filter Amplifier)という回路がよく使われます。TFAというのは、入ってきたパルスの幅を鋭くしてタイミングをはっきりさせるためのもので、市販のモジュールではORTEC社の474などが有名です。
(ORTECのカタログのPDFより引用)
このモジュールでは、ゲインの調整、積分時定数の調整、微分時定数の調整、ポールゼロの調整、反転・非反転の切り替えなどができます。微分・積分の時定数は、なし~500nsまで段階的に調整できるようです。
そもそもTFAはどんな回路かというと、
このような、CR微分回路とRC微分回路をくっつけたものです。間にバッファが入っていて、インピーダンスの隔離ができています。
これをディジタル回路で実現しようとしているのですが、昨日は微分回路のディジタルフィルタ化ができたので、今日は積分回路をディジタル化しようとしています。
RCの積分回路をディジタルで実現すると、
y[k] = by[k-1] + a[k] ・・・ (1)
ただし、a=1/(1+τ)、b=τ/(1+τ)、τ=CR/T ※T=サンプリング周波数
で実現できます。つまり、1個前の出力結果と、新しい入力を適当な比で足し合わせたものになります。
なお、回路全体にゲインを持たせたい場合は、aの代わりにa×Gにすればよいでしょう。
実際にFPGAに実装して、やってみました。
こんなコントロールパネルから、時定数やゲインを滑らかに変えられるようにしました。
まず、微分の時定数が0.5usで積分の時定数が0(積分なし)の場合。微分のみの出力が得られています。
次は微分が0.5us、積分も0.5usの場合。積分はLPFなので出力振幅が減ってしまうので、ゲインを2倍にしています。なんとなくパルスが広がったのがわかります。
今度は積分の時定数を1.5usにした場合。
せっかく鋭くしたパルスを広げてどうするのかと言われそうですが、あくまでも動作テストなので。
最後に、TFAとCFD(Constant Fraction Discriminator)を通した波形を示します。
データの点に■を付けてみました。最初の10個くらいの部分が重要なのがわかります。緑の波形が乳慮kう波形。青がTFA出力、茶色がCFDの出力です。
入力された長いテイルの波形が鋭くなって、ゼロクロスによってタイミングがはっきりと確定しています。
このように、TFA+CFDという、放射線計測でよく使われる波形整形回路がディジタル化できました。
ディジタルフィルタってのは実際に作ってみると面白いですね。パラメータを滑らかに変更できるのが最高です。
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