AD7960を使ったADCシステムのS/N改善
THS4521をアナログフロントエンドに採用するとした場合、THS4521はレールツーレールとはいえども、0.1V~4.7Vくらいしか出せません。
AD7960には0~4.096Vの入力信号を与えたときにフルスケールになりますが、下の方が出ないため、フルスケールまで振り切れなくなります。その上、AD8253の出力特性にもひっかかります。AD8253の出力はVCC-1.4V程度です。
また、AD8253(ゲイン1)→THS4521(ゲイン1)→AD7960という構成では入力信号の振幅が±4.096Vになって、微小信号を扱うADCとしては大きすぎて扱いにくくなります。
そこで、2段目のTHS4521に5倍のゲインを持たせて、約1.0Vpp程度のフルスケールのADCへと改良をしてみました。
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まず、改良前の回路で測られたノイズのスペクトラムです。

前々回の記事でも書いたとおり、半値半幅で見るとノイズは62μV程度と見積もられます。
回路の全体の図は、下の図のようになっていて、AD7960自体で46μVのノイズが生じているほか、2つのOPアンプで45μVと4.6μVのノイズが発生しています。
これらのノイズは独立して発生しているので、二乗の和の平方根となるので、√45^2+4.6^2+46^2≒65μVとなって、結果とほぼ一致します。
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AD8253のノイズはデータシートによると、ゲインによって変わります。ゲイン1の場合は最大45nV/√Hzですが、ゲイン10以上では12nV/√Hz以下に下がるようです。
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次にTHS4521に5倍のゲインを持たせた場合の、全体のノイズヒストグラムです。

半値半幅は4.5本なので、ADCの部分で測ったノイズは139μVということになります。(入力に換算すると27μV)
しかし、前のモデルで計算するとAD8253のノイズ45μVも5倍されているはずですから、√225^2+23^2+46^2=230μVなければなりません。そう考えると、AD8253のノイズが45μVもあったというのが過大評価だったのかもしれません。
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次にAD8253のゲインを10、THS4521のゲインを5に切り替えた場合です。
半値半幅は13.5本ですから、ADCの部分で測ったノイズは418μVです。(入力に換算すると8μV)
逆算すると、AD8253が8nV/√Hzで8μV程度のノイズが発生して、80μVに増幅され、それがTHS4521で400μVにまで増幅されえいると仮定すると辻褄が合います。
データシートのノイズの値は、最大値で、実際にはより小さいと言えるでしょう。
結論です。
- AD8253のノイズはデータシートに書かれている最大値ほど悪くはない。
- ゲインを上げてフルスケールを1Vppとしたところ、入力換算ノイズは約27μVまで減らすことができた。
- ゲインを上げてフルスケールを0.1Vppとしたところ、入力換算ノイズは8μVまで減らすことができた。
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